現代の情報システム部門を取り巻く環境は、複雑で多様な課題に満ちています。システムの老朽化、慢性的な人材不足、高度化するサイバー脅威、厳格化する法規制、そして経営陣からのDX推進要求。これらの課題は個別に存在するのではなく、相互に関連し合いながら情シス担当者を悩ませているのが現実です。限られたリソースの中で、どの課題から優先的に取り組むべきか、どのような解決策がもっとも効果的なのか。多くの情シス担当者が日々頭を悩ませています。
本記事では情シス部門が直面する主要な課題を体系的に整理し、それぞれに対する具体的かつ実践可能な解決策をご紹介します。
情シス部門のもっとも深刻な課題の1つが慢性的な人材不足です。限られた人員で増大するIT業務をこなすため、担当者の負荷は年々増加しています。
IT人材の採用競争は激化しており、特に中堅企業では経験豊富な人材の確保が困難な状況です。新卒採用においても、優秀な学生は大手企業やIT専門企業に流れる傾向があり、情シス部門への人材供給は慢性的に不足しています。結果として、既存メンバーへの業務集中と長時間労働が常態化しているケースが多く見られます。
IT人材不足の詳細な分析と包括的な解決策については、「IT人材不足の現実と対策:情シス部門に必要な多角的アプローチ」で詳しく解説しています。
クラウド化、リモートワーク対応、セキュリティ強化、コンプライアンス対応など、情シス部門が対応すべき領域は年々拡大しています。さらに近年ではDX推進、生成AI活用推進等の新たな要求も加わり、各部門からのシステム改善要求や新機能追加の依頼も増加傾向にあります。
結果として、限られた人員で従来のIT運用業務に加え、業務プロセスのデジタル化、AI導入戦略の策定、ゼロトラストセキュリティやハイブリッドワーク環境の整備など、次々と登場する新技術への対応が求められ、情シス担当者は対応しきれない状況に直面しています。
日々発生するトラブル対応や問い合わせ対応などの緊急性の高い業務に時間を取られ、中長期的な計画立案や戦略的なシステム改善に着手できない悪循環が発生しています。この状況が続くと、システムの老朽化やセキュリティリスクの増大を招く可能性があります。
人材不足の解決には、採用強化と既存リソースの最適化を組み合わせたアプローチが効果的です。まず、柔軟な働き方の導入や副業人材の活用により、従来の採用枠を超えた人材確保を図ります。同時に、定型業務の自動化やアウトソーシングの活用により、既存メンバーの負荷軽減を実現します。また、他部門社員向けのIT基礎研修を実施し、簡単な問い合わせ対応を分散させることで、情シス担当者がより専門性の高い業務に集中できる環境を整備します。
特に効果的なのが、包括的なIT業務のアウトソーシング活用です。例えば、パシフィックネットのヘルプデスクサービスでは、各種アプリケーションの問い合わせ対応からPC・周辺機器のトラブルシューティング、アカウント管理まで幅広く対応します。また、PCレンタルサービスではPC調達から故障対応、データ消去まで企業のIT資産管理をトータルサポートし、情シス部門の業務負荷を大幅に軽減します。
サイバー攻撃の高度化と法規制の強化により、セキュリティ対策とコンプライアンス対応の重要性が高まっています。情シス部門には運用中のシステム保護だけでなく、機器のライフサイクル全体にわたるセキュリティリスクの管理が求められており、包括的な対応が課題となっています。
従来の境界防御では対応が困難な標的型攻撃やランサムウェアなど、サイバー攻撃の手法は日々進歩しています。情シス部門には最新の脅威情報の収集と迅速な対策実装が求められていますが、専門知識を持つ人材の不足により対応が後手に回るケースが増えています。
個人情報保護法の改正やGDPR(EU一般データ保護規則)対応など、IT関連の法規制は複雑化・厳格化の一途をたどっています。違反時のペナルティも重く、企業の社会的信用にも大きな影響を与えるため、確実な対応が必要ですが、法務知識とIT技術の両方に精通した人材は希少で対応に苦慮している企業が多いのが現状です。
企業のデータ保護において、運用中のセキュリティ対策と同様に重要なのが機器廃棄時のデータ処理です。PCやサーバーのリプレース、退職者の機器回収、故障機器の処分など、さまざまな場面でデータ漏えいリスクが発生します。単純なファイル削除やフォーマットでは専用ツールによりデータが復元される可能性があるため、確実なデータ消去が必要です。
パシフィックネットのデータ消去サービスは、国際基準に準拠した上書き消去、物理破壊、磁気消去の3つの手法により、お客様のご要望に応じた確実なデータ消去を実現し、情報漏えいリスクを根本から排除します。データ消去証明書の発行により、コンプライアンス要件への対応も可能です。
すべてのセキュリティ対策を内製化することは現実的ではありません。セキュリティ専門業者のサービス活用や統合セキュリティソリューションの導入により、限られたリソースでも効果的な対策を実現できます。また、従業員向けセキュリティ教育の充実により、人的リスクの軽減も重要な対策の1つです。
限られた予算の中で最大の効果を得るため、日々の運用コスト管理と予算配分の最適化は情シス部門の重要な実務課題となっています。特に、クラウドサービスやSaaSツールの普及により、従来の一括購入型から従量課金型へのコスト構造の変化に対応した新しい管理手法が求められています。
クラウド化により初期投資は削減できますが、利用量の増加にともなうランニングコストの増大に悩む企業が増えています。従量課金制のサービスでは月々の利用料金が予測困難で、気がつくと予算を大幅に超過していたというケースも少なくありません。リソースの自動スケーリングや開発環境の放置により、想定外のコストが発生するリスクも高まっています。
業務のクラウド化にともないSaaSツールが急速に増加し、ライセンス管理が複雑化しています。部門ごとに導入されたツールの把握が困難で、重複したサービスへの支払いや未使用ライセンスの発生が頻発しています。また、ユーザーの異動や退職時のライセンス回収漏れにより、無駄なコストが継続的に発生するケースも多く見られます。
限られたIT予算の中で、既存システムの運用保守費と新規投資のバランス調整が重要な課題となっています。運用保守費の割合が高すぎると新技術への投資ができず競争力が低下し、逆に新規投資を優先すると既存システムの安定性に影響を与える可能性があります。適切な予算配分の指標作りと継続的な見直しが必要です。
多くの企業で長年使用されてきた古いシステムが、現在の情シス部門にとって大きな負担となっています。これらのシステムは、DX推進や新技術導入の足かせとなるだけでなく、セキュリティリスクの増大やクラウド連携の阻害要因ともなり、企業の成長機会を制約する要因となっています。
古いシステムは保守性が低く、小さな変更でも多大な工数が必要になります。また、専門知識を持つ人材が限られているため、属人化リスクも高く、担当者への負荷集中を招いています。クラウドサービスとの連携も困難で、全体的なシステム効率を低下させる要因となっています。
短期的な修正や機能追加を繰り返した結果、システム全体の複雑性が増し、将来的な大規模改修が避けられない状況が生まれています。この技術的債務は時間の経過とともに解決コストが増大するため、早期の対策が必要です。
すべてのシステムを一度に刷新することは現実的ではありません。ビジネスへの影響度と改修コストを考慮し、優先順位をつけた段階的なアプローチが重要です。まずはクラウド移行が容易な部分から着手し、段階的にシステム全体の近代化を進めることで、リスクを最小化しながら改善を図れます。
情シス部門と経営陣との間にはIT投資の必要性や効果に対する認識ギャップが存在し、適切なIT戦略の推進を困難にしています。このギャップは技術的な専門用語や概念の理解の差だけでなく、IT投資の成果が現れるまでの時間軸や評価指標に対する考え方の違いにも起因しています。
システム投資の効果を経営陣が理解できる形で定量化し説明することは、情シス部門の重要な課題です。特にインフラ投資やセキュリティ対策は直接的な売上貢献が見えにくく、投資対効果を数値で示すことが困難です。業務効率化による時間短縮やシステム障害回避による機会損失防止など、間接的な効果を適切に評価・説明する手法の確立が求められています。
経営陣は四半期や年度単位での成果を重視する傾向がある一方、ITシステムの改善効果は中長期的に現れることが多く、この時間軸のズレが大きな課題となっています。システム刷新や基盤整備などの投資は効果が現れるまでに数年を要するケースも多く、短期的な成果を求める経営陣との調整が困難になりがちです。
経営陣との認識ギャップを解消するには技術的な詳細ではなく、ビジネス価値や競争優位性の観点からIT投資の必要性を説明することが重要です。売上向上、コスト削減、リスク回避、競合優位性確保など、経営目標に直結する効果を具体的な数値と他社事例を交えて説明し、IT戦略の重要性を継続的に訴求する必要があります。
DXの必要性は理解しているものの、日常業務に追われて十分な取り組みができていない企業が多いのが現状です。デジタル化の取り組みを効果的に進めるには、全社的な変革管理と段階的なアプローチが重要であり、情シス部門には技術導入だけでなく、組織全体のデジタルリテラシー向上や業務プロセス改革の推進役としての役割が期待されています。
情シス部門がDX推進の旗振り役として期待されている一方で、日常的な運用業務やトラブル対応に時間を取られ、戦略的なデジタル化施策に着手できない状況が続いています。また、現場部門の協力を得ることが困難で、全社的な取り組みに発展させることができないケースも多く見られます。
すべてを一度にデジタル化することは現実的ではありません。まずは効果の見込める部分的な業務から自動化やシステム化を進め、成功事例を作ることで全社的な理解と協力を得ることが重要です。クラウドサービスやSaaSツールの活用により、短期間での効果実現も可能です。
ただし、デジタル化を効果的に進めるには、情シス部門が本来注力すべきコア業務と定型的なノンコア業務を明確に区分し、戦略的な業務により多くのリソースを割く必要があります。
情シス部門の価値創造型への転換については、「情シスのコア業務とは?戦略的IT部門への転換で企業価値の最大化に貢献」で詳しく解説しています。
情シス部門が直面する課題は相互に関連しており、個別の対策だけでは根本的な解決は困難です。人材不足の解消、業務効率化、外部リソースの活用を組み合わせた総合的なアプローチにより、持続可能な情シス組織の構築を目指すことが重要です。まずは自社の課題を正確に把握し、優先度の高いものから段階的に取り組んでいくことで確実な改善を実現できるでしょう。
パシフィックネットは、PCレンタルサービスからキッティング、ヘルプデスク、データ消去まで、情報システム部門の課題解決・業務支援を行う専門企業です。20年以上の実績と経験豊富なエンジニアチームにより、情報システム部門が抱える多様な課題の解決を支援しています。人材不足やコスト最適化など、情シス業務でお困りの企業様はお気軽にお問い合わせください。