28.1㎏――皆さんはこの数字が何を表していると思いますか?これは、少し古いデータになりますが、環境省が10年ほど前に発表したパソコン1台あたりの製造・廃棄時のCO2(二酸化炭素)排出量です。技術革新や世界的な人口増に伴う環境破壊は年々深刻となっており、企業にも環境問題に取り組む姿勢が求められています。仕事に欠かせないパソコンの導入方法一つとってもそうです。パソコンをレンタルすれば、製造量が抑えられ、廃棄資源の無駄も減らせるはずです。今、世界的に注目されているサーキュラー・エコノミー(循環経済)を紐解きながら、パソコンレンタルについて考えてみましょう。
サーキュラー・エコノミー(循環経済)という言葉は、皆さんも一度は聞いたことがあるかもしれません。そして、聞いたことがある人は、それが何となく、環境に良い循環システムであることを知っているのではないでしょうか。
まず、サーキュラー・エコノミーの定義について、経済システムの変遷と背景にもとづきながら説明していきたいと思います。
産業革命以降、資本主義の発展と急速な技術の進歩や革新は、リニア・エコノミー(直線型経済)のもとに成り立っていました。
リニア・エコノミーとは調達から生産、消費、廃棄までの流れが一方向である経済システムをいい、大量生産・大量消費・大量廃棄といった使い捨てを基本としました。
このリニア・エコノミーにリサイクル(再生)の観点を取り入れたのが、日本でなじみの深い3R(スリーアール、リサイクリング・エコノミー。3Rはリデュース(Reduce、削減)、リユース(Reuse、再利用)、リサイクル(Recycle、再生)の3つのRの総称)です。どうしても出てしまう廃棄物の寿命を延ばしたり、廃棄物の発生を抑えたりして、環境への負荷を軽減させる体系です。
この3Rをさらに発展させたものがサーキュラー・エコノミー(循環経済)ですが、3Rも「循環」と捉えた時、3Rとサーキュラー・エコノミー(循環経済)は似たような概念で理解されてしまうかもしれません。
サーキュラー・エコノミー(循環経済)が3Rと根本的に大きく異なる点は大きく2つ挙げられます。
まず、一つは廃棄物と汚染を発生させないという考え方です。サーキュラー・エコノミー(循環経済)は生産の過程において、廃棄物の原料にバイオプラスチックなど再生利用できる素材を使うなど工夫し、従来であれば廃棄されるはずの製品や原材料などを新たな資源として価値を見出し、循環させます。
もう一つは、単なる環境保全の取り組みではなく、経済成長をも狙うという点です。サーキュラー・エコノミー(循環経済)を経済成長戦略として、世界に先駆けて取り組んだのは欧州でした。EU(欧州連合)の政策執行機関である欧州委員会は15年12月、資源循環政策「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」を打ち出しました。
サーキュラー・エコノミー・パッケージでは、資源の効率的な活用により環境保全と資源枯渇対応を進めるほか、国際社会における経済優位性の確立を目的とし、30年までに6000億ユーロ(約79兆円)の経済価値を生み出すと試算しています。
一方、日本では、経済産業省が今後の循環経済政策が目指すべき報告を示す「循環経済ビジョン2020」で、1999年に策定した「1999年循環経済ビジョン」で導入した環境活動としての3Rから、経済活動としてのサーキュラー・エコノミー(循環経済)への転換を表明しました。
サーキュラー・エコノミー(循環経済)には3つの原則があります。
サーキュラー・エコノミー(循環経済)を推進している団体「エレン・マッカーサー財団」(拠点はイギリス)はそれらを下記のように挙げています。
1.廃棄物と汚染を出さない設計を行う、では、従来のように廃棄物を対処する、つまり「廃棄物から設計する(design from waste)」のではなく、廃棄物や汚染をゼロに近づける設計をしていくということです。
2.製品と原材料を使い続ける、では、資源とは製品や原材料のみならず、資源採掘のための労働力やエネルギーをも含み、これらを維持することの重要性が訴えられています。
ここでのもう一つの要点は、原材料を加工した製品を使い続けることと、製品が寿命を迎えたあとも、原材料を分解したり溶解したりして再利用していくことが指摘されています。
3.自然サイクルを再生する、は廃棄物を「栄養」として循環させていくもので、主に農業分野で先行して取り組まれています。例えば、生物多様性を利用して土壌を回復したり、森林農法で自然を豊かにしていったりすることなどが挙げられます。
では、実際に、上述してきたサーキュラー・エコノミー(循環経済)の考え方をビジネスに取り入れると、どのようなモデルになるのでしょうか。
戦略コンサルティングファームのアクセンチュアは、次の5つを挙げています。
アクセンチュアは、2030年までにサーキュラー・エコノミーで生み出されるグローバルな経済効果を4.5兆米ドル(約540兆円)と予測しており、そのうち、シェアなどの遊休資産の活用は6651億ドル(約72兆円)を占めるとしています。
遊休資産とは「事業目的で取得したものの、何らかの理由によって稼働していない資産のこと」です。土地や建物の不動産だけではなく、大型の工作機械や事務用設備、古いパソコンなども含まれます。
実際のサービスの例としては、カーシェアリングやファッションレンタル、シェアハウスなどが挙げられます。
加えて、こうしたシェアリングエコノミー(共有経済)やリース、サブスクリプションモデルといった製品のサービス化が広がることで、リファビッシュ(製品の作り替え)や修理などの需要も拡大するとされています。
シェアリングは、所有する必要があった製品やコトが、開かれた不特定多数に共有されることで気軽に借りたり、利用したりできるものです。
シェアリングはクラウドファンディングやカーシェアリング、音楽および映像ストリーミングなど主に5業種に分類されます。その市場規模は年々拡大しており、イギリスの大手コンサルファームPwCによると、25年には13年の2倍以上にあたる3350億米ドル(約37兆円)までになると推測されています。
「所有せず借りる」という点においては、貸し出し専用の商品を決められた期間、有料で利用できるレンタルもシェアリングの一つと言えるでしょう。シェアリングやレンタルは、今後、より身近なサーキュラー・エコノミー(循環経済)のビジネスモデルとして浸透していくことが期待できます。
もちろん、パソコンのレンタルも例外ではありません。必要な時に、必要な期間、必要な台数のパソコンを借りることで、購入に伴う製造や廃棄の際に出る資源を減らすことができます。よって、パソコンレンタルがサーキュラー・エコノミー(循環経済)の考え方を反映した、環境に優しいシステムであることをお分かりいただけると思います。
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