以前は自店のPRで、マンションの郵便受けなどにDM(ダイレクトメール)やチラシが勝手に配布されたりしていました。
しかし、最近ではオートロックシステムが普及して、簡単には入れなくなっています。
オフィスでもICカード型の社員証がなければ入れないビルが増えています。駅の改札のように社員証を一人ずつ通さないと入居できないビルもあります。
いろいろなオフィスが入居している雑居ビルでは、読取機にICカードを「ピッ」とあてるタイプが多く、閉まるまでには時間があります。
その場合、どこかの社員の後ろにはりついていけば社員カードなしに入れてしまうでしょう。
悪意のある侵入者にとっては、出勤時で皆がバタバタしている時やランチから皆が帰ってくる時などの時間帯こそが狙い目です。ビルの中に入ってしまえばしめたもの。退出のチェックはしないので盗聴機を仕掛け、機密情報を盗むことができます。
コストはかかりますが、入退出のラッシュ時には守衛を置いて監視するなど対策が必要です。暗証番号を入力してビルに入るタイプでは「ショルダハッキング」に気をつけましょう。
ショルダハッキングとは肩越しにパスワードなどを盗み見ることをいいます。侵入者が暗証番号を覚えてしまえば、そのビルは“フリーパス”になってしまいます。
「バックドア」という言葉をご存じでしょうか。「裏口」という意味で、利用者が気づかないうちソフトの一部に侵入口を作り、そこから侵入することをいいます。バックドアを通じて、PCやサーバーを外部から操作することができます。
よく行われるのがユーザー心理につけこんだ方法です。
以前、報道で騒がれたのがスマートフォン(スマホ)の「電池長持ちアプリ」です。スマホは便利ですが、悩みはバッテリーの減りが速いことです。「電池が長持ちするならありがたい」とダウンロードしても、そんなうまい話はなく、電池が減るスピードは変わりません。反対に、インストールするとスマホ内の連絡先を丸ごと外部にデータ送信されてしまいます。
大手企業が提供するアプリマーケットにもバックドアを設置するウイルス付きのアプリが紛れ込んでいます。アプリに対するレビュー、公開期間などから総合的に信用できるか判断してインストールするようにしましょう。
アメリカではUSB経由で電池充電できるキットを販売していました。キットを使うにはドライバー(ハードを動かすためのソフト)をインストールしなければならず、このドライバーにウイルスが付いていました。これではUSBに接続しただけでウイルス感染します。誰かにもらったUSBメモリーなどにはくれぐれも注意してください。
バックドアが仕掛けられた状態で製品が売られている場合もあります。iPhone(アイフォーン)のメール情報にアクセスしようとする時にパスワードが求められますが、パスワードを何回か失敗するとロックされて中身が消えてしまうことがあります。
FBIが銃乱射事件の犯人が所持していたiPhoneの情報にアクセスするためアップルにiPhoneをロック解除するよう協力要請しましたが、アップル社は拒否しました。
ここでのFBIの意図は「パスワード入力などを迂回できるバックドアをiPhoneに設けろ」ということなのです。アップル社は拒否しましたが、捜査協力に応じているメーカーがあるかもしれません。実際、アメリカでは第三国へ輸出するルーターなどにバックドアを仕掛けているようです。
内部告発サイト「ウィキリークス」では、アメリカの国家安全保障局が少なくとも2006年頃から日本政府や日本企業を対象に盗聴していたとしています。同盟国でさえ、この状況なのですから、他国でもやっているでしょう。
デフォルトパスワードのまま放置してネットワーク接続されている複合機などはたくさんあります。パスワードをデフォルトのまま放置しないユーザーの意識向上が課題となっているのです
1960年、三重県・津市生まれ。京都産業大学理学部卒。ITベンダーでシステムエンジニア、プロジェクトマネージャーを担当。その後、専門学校、大学で情報処理教育に従事。2002年に水谷IT支援事務所を設立し、所長に就任。三重県産業支援センター、大阪府よろず支援拠点、ひょうご産業活性化センターなどで経営、IT、創業を中心に累計4100件以上の経営相談を行う。
著書に「インターネット情報収集術」(秀和システム)、電子書籍「誰も教えてくれなかった中小企業のメール活用術」(インプレスR&D)。現在、All About 「企業のIT活用」担当ガイドとして、IT活用にまつわる様々なガイド記事を発信中。中小企業診断士、ITコーディネータ・インストラクター、アプリケーション・エンジニア、販売士1級&登録講師。
この記事は株式会社パシフィックネットが運営していたWebメディア「ジョーシス」に 掲載されていた記事を転載したものです。
2016年5月17日掲載