企業で社員に渡すパソコンは、ほとんどの場合「すぐに使える状態」になっています。これは、購入直後のパソコンそのままではなく、さまざまな設定や管理登録を済ませてあるからです。こうした事前設定をキッティングといいますが、従来は情報システム部門が作業を担っていました。しかしパソコン台数が増えると、設定作業も管理も増えて大変です。キッティングをスムーズに進めるには、どうすればよいのでしょうか。
ここでは、キッティングの概要や手順、自社で行う場合の注意点などについて説明します。
キッティングとは、パソコンの組み立て、OSやアプリケーションのインストール、各種設定、管理登録などを行い、業務で「すぐに使える状態」にすることを指します。キッティング(kitting)とは、整備・配備という意味です。
キッティングは主に、企業から社員に提供するパソコンで行われますが、最近ではタブレットやスマートフォンでもこの作業が必要な場合があります。キッティングが行われるのは、新人入社、パソコンの入れ替え、オフィスの新規開設や移転、大規模なシステム更新などの場合です。企業によっては一度に数百台のパソコンのキッティングを行うこともあり、スピードと正確さが必要になります。
従来は、情報システム部門がキッティングを担当し、多くの場合、手作業で行っていました。現在はキッティング専門業者が登場し、一括してアウトソーシングすることもできます。
キッティングでは、パソコンに次のような作業を行います。
・事前の打ち合わせ
必要な作業や設定、スケジュールなど、キッティング作業の詳細を決定する。
・パソコンの開封、設置、通電
欠品や初期異常がないか確認する。
・モニターやマウス、キーボードなど周辺機器の接続
ネットワークを経由しない周辺機器と接続する。ノートパソコンでは不要になる部分も多い。
・BIOSなどのセットアップ
必要な場合のみ行われる。
・OSのインストール、初期セットアップ
OSのアップデートも含む。
・カウントやネットワークの設定
社内ネットワークへの接続設定、個別アカウントの作成、権限割り当てなどを行う。
・各種ドライバーのインストール
ネットワークプリンターなど、社内ネットワークを利用する周辺機器との接続と設定を行う。
・業務アプリケーション類のインストールと設定、ライセンス認証
Microsoft Officeやクラウドサービス、業務システムなどのインストールと認証を行う。
・アップデートやセキュリティパッチの適用
OSやアプリケーション類の更新プログラムをインストールする。
・セキュリティの設定
アンチウイルスソフトなど、社内で行われているセキュリティ対策を適用する。
・ドメイン参加
必要に応じて、Active Directoryへのドメイン参加を行う。
・各種設定の動作確認
一通り設定が済んだら、動作確認を行う。
・管理番号ラベルの貼り付けや管理台帳への記帳
社内の管理台帳にパソコンの型番、シリアル番号、MACアドレスなどを登録し、パソコンに管理番号ラベルを貼り付ける。
・梱包材や古いパソコンの処分
新規購入したパソコンなら、購入時の梱包材を廃棄する。パソコンの入れ替えの場合は、古いパソコンを処分する。
部署やユーザーの役職によって利用目的が異なるため、作業やインストールするアプリケーション、設定の内容が異なります。特に、利用権限の設定は慎重に行わなければなりません。
キッティングは、パソコンと周辺機器、アプリケーションを一式まとめてすぐに使えるようにすることです。
セットアップには、幅広い意味があります。キッティングと同じような内容から、単独のソフトウェアのインストールと初期設定まで、場面によって含まれる内容が異なるので注意が必要です。
キッティングの手法には、手作業とクローニングの2種類があります。それぞれの特徴と手順を説明します。
1台ずつ手作業で、設定やアプリケーションのインストールなどを行います。パソコンの台数が少ない場合や、少数ずつ複数の機種、複数の設定内容が必要な場合に向いた手法です。
・メリット
キッティングが必要なパソコンがあればすぐに作業ができる
・デメリット
1台ずつ手作業でキッティングを行うため、ミスや品質のムラが発生しやすい
コストが高くなる
作業手順
マスターPCと呼ばれる、原本となるパソコンを1台作成し、それを複製することでスピーディーに大量のキッティングを行う方法です。マスターPCにはOSやアプリケーション、およびその設定、デバイスドライバーなどが含まれます。
ただし、アカウントの設定や権限割当などはパソコンやユーザーの役職ごとに異なるため、1台ずつ手作業で行わなければなりません。
・メリット
大量のパソコンを一度にキッティングできる
ミスやムラを大きく減らし、完成したパソコンの品質がそろう
故障時の代替機作成も容易
・デメリット
スターPCの作成と検証にはある程度の時間が必要
作業する技術者にも一定のリテラシーや経験が必要
複数の機種や設定が必要な場合、マスターPCも複数必要になり、クローニングの準備に時間がかかる
作業手順
従来、キッティングは社内で情報システム部門やユーザー本人が行っていました。最近は、キッティングを専門に行う業者も存在します。
社内でキッティングを行う場合、次のような問題が起こる可能性があります。
・時間がかかる
情報システム部門は、通常業務と平行してキッティングを行わなければならないため、作業量が大幅に増えます。パソコンの台数や種類が増えるとさらに負担が増え、時間もかかるでしょう。
これでは情報システム部門の労働時間が増えるため、コストもかかってしまいます。
・ミスが発生する
情報システム部門の作業量が増えることで、ミスが発生しやすくなります。クローニングではなく手作業でのキッティングを行っている場合は特に、作業レベルのムラや、ミスが多発しやすいものです。
これでは情報システム部門だけでなく、ユーザーの業務にも差し支えるでしょう。問題が起こる原因としては、以下が考えられます。
・情報システム部門に本来業務以外の過度な負担をかけること
・情報システム部門でも、キッティングについては経験の浅い社員がいること
こうした点を考慮すると、可能であればキッティングをアウトソーシングするのがおすすめです。コストはかかりますが、品質に大きな差が出るでしょう。
キッティングをアウトソーシングすると、次のようなメリットがあります。
・作業が速く効率的
ノウハウを持つプロが作業するので、正確でスピーディーなキッティング作業が可能です。台数が多い場合は、クローニングでより効率的な作業を行い、スムーズに対応できます。
・品質を均質化
標準の手順を決め、知識のあるスタッフがそれに沿った作業を行うので、作業漏れやミスが発生しにくく、キッティング後の品質を一定レベル以上にそろえることができます。
また1台ごとに作業記録を残すので、初期不良や後日のトラブルにも対応可能です。初期不良のパソコンも、多くはキッティング段階で発見されます。
・最新情報をキャッチアップ可能
業者は常に、OSやアプリケーション、セキュリティなどの最新情報を入手しており、作業に反映しています。
・管理登録も容易
業者は、1台ごとの付属品管理や資産登録などの面倒な作業も、キッティング作業のひとつとして担当します。情報システム部門があとから登録する必要はありません。
・社内の負担が軽減する
作業を任せることで、情報システム部門の負担が軽減できます。正確なキッティングにより均質で使いやすいパソコンがスピーディーに提供されることで、ユーザーもスムーズに業務を進められます。
新人採用、パソコンの故障やトラブル対応、パソコンの入れ替えなど、キッティングを行う機会は案外多いものです。台数が少なければ、1台ずつ手作業でキッティングすることもできるでしょう。しかし、それでは他のパソコンとの品質がそろわなかったり、作業が増えて時間がかかったりして、トラブルにもつながりかねません。
正確さとスピードを備えた効率的なキッティングを行うためには、アウトソーシングがおすすめです。作業の負担を減らすだけでなく、後々のトラブルまで減らすことができ、安心して使えるパソコンを社員に提供できます。
パシフィックネットのキッティングサービスなら、さらに次のようなメリットがあります。
・要望に合わせてカスタマイズしたパソコンをご用意
パソコンの仕様は希望に合わせて機器を組み合わせ、カスタマイズできます。パソコンはお客様が購入されたものだけでなく、当社のレンタルサービスと組み合わせてレンタルパソコンを用意することも可能です。
・作業場所を選べる
キッティング作業は当社のテクニカルセンターで行うことで、コストを抑えられます。ご要望に合わせて、オンサイト(お客様のオフィス)での作業も可能です。
・高いセキュリティを確保
当社のテクニカルセンターはISO 27001を取得済みです。またマルチ防犯カメラを設置、厳格な入退室管理を行い、高い安全性を確保した場所で作業を行います。
料金・メニューは、ご希望の内容により変動します。詳細については、お気軽にご相談ください。