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リーダーのための「時間管理」解決クリニック6
「仕事のことが頭から離れません」

ここは時間に追われ、忙しいリーダーのために開設されたクリニック。

このクリニックには時間管理にお悩みのリーダーが処方箋を求めて来院します。

おやおや、今日もお悩み抱えたリーダーがやってきたようですよ……。

【今回のお悩み】

リーダーのための「時間管理」解決クリニック06

「仕事のことが頭から離れません」

若林さん(係長職)35歳

プライベートの時間での悩みなんですが、仕事が終わった後も、仕事のことが気になるんです。それが最近ちょっとひどくなってきているような気がしてきました。

具体的には? 例えば、残業を終えて、職場を出た直後に「何かやり残したことがなかったかな?」と心配になることがあります。自宅を出た直後に「鍵を閉めたかな?」と不安になることって、たまにあるじゃないですか。あれと似た感じです。

自宅に帰ってからですか? やっぱり仕事のことは気になりますね。漠然とした不安みたいなものを感じることがあります。「明日は大丈夫だろうか?」って。

そうですね。最近、仕事量は多くなっています。残業も多いですね。毎日とにかく、できるところまで頑張って、できるだけ仕事を片付けているという感じです…。

※このお悩みは実際の相談の内容を元にしたフィクションです。

ちょっと心配な状況ですね。同じような状況に陥っている人はたくさんいると思いますが、そのなかでも若林さんは重症だと思います。

やり残したことがないか気になる、だからやり残しがないようにできるだけ残業する、それでも気になってしまうのですから、気が休まる暇がありません。仕事が終わった後も含めて長時間ストレスにさらされているので、メンタルヘルス上の問題が起こらないとも限りません。

こういった「仕事のことを忘れられない」「仕事のことが気になる」という状況になるのは、そこには何か「忘れてはいけない」と感じている理由があるはずです。それをクリアするためには、時間管理、特にタスクの管理が役立ちます。

では、対策を解説していきましょう。

【仕事のことが頭から離れない人の対策】

タスクを「忘れられない」のも問題

若林さんのお悩みは、タスク管理と深く関係しています。

「タスク」と呼ばれる仕事のほとんどは「期限までにやらなければいけない仕事」です。もし、うっかりタスクのことを忘れてしまうと困りますから、そのタスクを覚えておいたり、書き留めておいたりするわけです。

そんなふうに「忘れる」ことを防ぐのも大事ですが、逆に「忘れられない」のも問題になります。

そもそも、これから行うタスクのような未完了の課題は、完了した課題よりも私たちの記憶に残りやすいことが知られています。例えば、ウェーターをしている人は、提供が済んだ注文はすぐ忘れてしまいますが、未提供の注文はよく覚えているそうです。

覚えているからこそ助かることもありますが、困った面もあります。

「○○をやらなければいけない」という情報が頭の中に残っていて、しかも、その課題の数が多かったり、内容が難しいものであったりすると、それが気になってしまうのです。それらを頭の外に出さないと「目の前のこと」に集中しにくくなります。

タスク管理がうまくできていないと、多かれ少なかれこういう状況になります。

プライベートでリラックスできないのはもちろん、仕事でも集中力や効率が低下する可能性があります。仕事上のプレッシャーが多くなるほど、こういう状況に拍車がかかります。

若林さんも最近仕事上のプレッシャーが増えたので、こういう問題が顕在化してきたのではないでしょうか。 では、うまく忘れるためには、何が必要なのでしょうか? それは「その日の仕事が終わってから、翌日の仕事が始まるまで、その間は仕事のことを忘れてもいい」と自分に許可を与えることが必要なのです。

忘れても大丈夫な状態を作る

「許可を与える」ためには、忘れても大丈夫な状態を作ることが必須です。

まず、「明日行うタスク」が明確になっていること、そしてそのタスクを頭の外で可視化することが必要で、タスク管理がその役割を果たします。

頭の外で可視化するといっても、ただタスクを書き出しただけでは不充分です。

例えば、私は昔、タスクを付せんに書いて貼っていましたが、これだけではタスクのことを安心して忘れることはできませんでした。さまざまなタスクがごちゃごちゃに入り交じっていたからです(前のシリーズの第2回で紹介したエピソードです)。

では、どうすればいいのでしょうか?

ごく単純な方法としては「明日行うタスク」をリスト化する方法があります。「今日行うタスク」とは別に、「明日行うタスク」を書き留めていきます。

例えば、タスクを書き出すメモを2つ用意しておきます。1つは今日のリスト、もう1つは明日のリストです。もちろん「明日のリスト」は翌日になれば「今日のリスト」になります。

やらなければいけないけど、今日はできない。そういうタスクに気づいた時点で「明日のリスト」に書いていきます。終業時にあわてて明日のリストを作ると「書き忘れたものがあるのでは?」と不安を招きやすいので、気づいたらその場で追記していく方法がおすすめです。


このように単純に2つのリストを用いるだけでも、「明日行うタスク」を確実に思い出せるようになり、安心して忘れられる状況を作ります。

さらによいのは前のシリーズの第2回でも紹介したように、それぞれのタスクを最初から「実行日」に書いていく方法です。画像のように「Microsoft Outlook」などのソフトウエアを使ってもいいですし、手帳などに書いても構いません。

こうすると、今日、明日という目先のことだけでなく、もう少し先まで計画できるので、より確実に仕事を進めていけますし、安心感も高まります。


いずれにしても、タスクをただ書きとめるのではなく、「今日実行するタスク」「明日実行するタスク」のように実行日で切り分けることが、確実に思い出せる(安心して忘れられる)状態を作るために役立ちます。

「やるべきことが終わった」ことを確認する

これらのリストには、もう1つの効果があります。「今日やるべきことが終わった」と確認できる効果です。

終わったタスクにチェックを入れていけば、未完了のタスクが残っていないことが分かります。「今日やるべきことが終わった」「今日の時点でのやり残しはない」と確認できると、若林さんのように「何かやり残したことがなかったかな?」と心配しなくても済みます。

また、「今日やるべきことが終わった時点で帰ろう」と踏ん切りをつけられるので、むやみに残業することがなくなります。

おそらく、若林さんは自分のタスクを可視化していない(頭で覚えている)か、可視化していても実行日では分けていないと思います。だから、タスクのことを忘れられないだけでなく、「今日どこまでやるべきか」と毎日迷ってしまうのだと思います。
さらに、職場を後にする前に「今日のタスクは終わった」としっかり確認することも有効です。

「今日やるべきことが終わったよ」というサインを自分に与えることで、「仕事のことを忘れても大丈夫」という許可を自分に与えることができます。

オンとオフの切り替えは必要

仕事のことを安心して忘れられるようになると、いわゆる「オンとオフ」の気持ちの切り替えができるようになります。

こういう話になると、「オンとオフの切り替えをしようなんて生ぬるい」「いつでも仕事のことを考えているくらいでないと」みたいなことを言う人もいますが、そんな声は無視しましょう。

そもそも、そういう台詞は、部下を振り回しているワンマン型の上司が言っていることが多いものです。仕事上のストレスが比較的少ないタイプの人ですね。仕事でそれなりの不安やストレスを感じているのであれば、オンとオフは上手に切り替えていくのがおすすめです。

最後に仕事のことが頭から離れなくて困っている人への処方箋を出して今回の診察は終了です。

【仕事のことが頭から離れない人への処方箋】

やるべきタスクを忘れるのも問題だが、忘れられないのも問題だと心得よう
「今日行うタスク」とは別に「明日行うタスク」を書き出しておこう
最後に「今日行うタスク」が完了したことを確認して、職場を後にしよう
他人がなんと言おうと、オンとオフの切り替えは必要だと自覚しよう


水口 和彦(みずぐち・かずひこ)

大阪大学大学院修士課程修了。住友電気工業株式会社でエンジニアとして勤務するなかで時間管理を研究し、残業を大幅に削減。その経験を活かし2006 年に独立。数少ない「時間管理(タイムマネジメント)専門講師」として、数多くの企業や自治体、教育機関などで研修や指導を行い、早稲田大学エクステンションセンターの講師も務める。『部下を持つ人の時間術』(実務教育出版)など時間管理に関する著書多数。「まぐまぐ」よりメールマガジンを毎週配信中。


所属:有限会社ビズアーク/時間管理術研究所


この記事は株式会社パシフィックネットが運営していたWebメディア「ジョーシス」に 掲載されていた記事を転載したものです。
2017年4月20日掲載

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