ここは時間に追われ、忙しいリーダーのために開設されたクリニック。
このクリニックには時間管理にお悩みのリーダーが処方箋を求めて来院します。
おやおや、今日もお悩み抱えたリーダーがやってきたようですよ……。
リーダーのための「時間管理」解決クリニック05
「会議に時間を取られて困っています」
岡田さん(仮名)係長職 32歳
会議が多くて困っています。ただでさえ忙しいのに……
毎月の定例会議は3時間以上かかるのが当たり前。4時間、5時間とかかることもあり、その日は自分の仕事がほとんど進みません。
また、課のミーティングは課長のお説教が長々と続く一人舞台で、やっぱり時間が長いです。具体的で役に立つアドバイスならいいのですが、そうでもないですし……。
さらに、部下とのミーティングでは、部下の話が長くて要領を得ないので、イライラしてしまいます。結論から話すようにいつも言っているんですけどね。本当に、ムダな会議、打ち合わせが多くて、イヤになってしまいます。
※このお悩みは実際の相談の内容を元にしたフィクションです。
岡田さんは会議や打ち合わせでストレスがたまっているようですね。心中をお察しします……。
最近では会議の短縮に取り組む企業も増えているのですが、岡田さんのところはまだのようです。もしかしたら、体質的にちょっと古い会社なのかもしれません。
会議などのアポイントメントを減らすことは、労働時間を削減する上で重要な意味を持ちます。まずはそれを整理した上で、会議や打ち合わせを効率化する方法を考えてみます。
では、対策を解説していきましょう。
現在、いわゆる「働き方改革」の一環として、残業時間を削減する取り組みを始める企業が増えています。
残業を削減するとなると、定時内の時間の使い方がより重要になりますし、ムダな会議を削減していかないと自分の仕事が進みません。これ、実は意外と深刻な話です。
前のシリーズ「情シスリーダーのための時間管理術」の第1回で紹介したように、私たちの仕事は3タイプに分けることができます。会議や打ち合わせなどの「アポイントメント」、デスクワークなどの「タスク」、そして問い合わせや部下からの相談、トラブル対応などの「予定外の仕事」です。
以下の図は、それぞれの仕事に使っている時間を表したものです。
上段がリーダー的なポジションにいる人の一般的な時間の比率を表しています。リーダーはアポイントメントや予定外の仕事が多いので、そのしわ寄せで、タスクに使える時間はもともと少なめです。この状態から、労働時間を減らしていくと、どうなるでしょうか?
例えば、残業が月50時間ある人が月30時間に減らそうとするなら、労働時間全体としては約1割減らすことになります。
しかし、アポイントメントと予定外の仕事は、自分の都合だけでは減らせません。結局、タスクの部分だけが削られることになります。ですから、全体としては1割の削減でも、タスクに使える時間は3割ほど削られてしまうのです(中段)。
もともとの労働時間がさらに長く、労働時間を2割減らずことが必要な場合は、タスクに使える時間が半分以下になります(下段)。いままでの7割、あるいは半分しかタスクがこなせないとなると、自分の仕事が進みません。
全体としての労働時間を減らしつつ、タスクに使う時間も確保するためには、アポイントメントと予定外の仕事の時間を減らす必要があります。
しかし、予定外の仕事は自分ではコントロールしにくいものですし、部下とのコミュニケーションに関わることでもあるので、むやみに減らすことはできません。結局、アポイントメントの部分を減らさないことには話にならないのです。
会議を短縮するためには、会議の目的を明確にし、余分な部分を削っていく必要があります。
例えば、単純な伝達事項なら、メールで済ませることを検討すべきです。また、執拗なお説教やダメ出しは会議を長引かせるだけですし、そもそもお説教は長いほど効果が上がるというわけではありません。厳しい言い方ですが、私は“長いお説教は時間のムダ”と思います。
ただ、問題なのは、そうやって会議を長引かせているのが上司だというところです(古い体質の組織ではありがちな話です)。上司に向かって「お説教はやめてください」とは言いづらいですよね。
お説教をやめさせるというより、話の方向を変える方がまだ楽です。例えば、「次のアクションを決めましょう」と助言することで、今後のことに話題を移すように誘導していきましょう。
また、時には会議時間を短縮する必要性を訴え、説得することも必要です。
説得方法の1つは、定量的に訴えることです。現状、どれだけの時間を会議や打ち合わせに費やしていて、それが労働時間のなかでどれだけの比率を占めているのか、残業を削減するとどうなるのかなど、実績に基づいて話をするわけです。
簡単に計算するには「週1回の2時間の会議は労働時間の5パーセントに相当する」と覚えておくのもいいと思います。5パーセントでも、積み重なれば大きいですよね。
あるいは、もっと単純に「Googleでは会議を30分で終わらせるらしいですよ」と、他社を引き合いに出して説得する方法もあります。こういうネタが好きな上司の場合は効果があるかもしれません。
一方、自分が仕切る会議では、積極的に会議をコントロールしていきましょう。
例えば、必ず定刻にスタートする。終了時刻を書いておき、その時間までに終わらせる。ホワイトボードにあらかじめ議題を書いておく。決まったことは明確に記録するなど、やれることはやっていきましょう。
岡田さんの言葉で1つ気になったのは、部下の発言についての部分です。
「結論から話すように」と指導するのはいいと思いますが、言い方によっては部下が萎縮してしまい、思っていることや困っていることを言えなくなってしまう場合があります(上司がイライラした態度でいるとなおさらです)。
そのせいで会議後の部下の仕事が滞ってしまっては本末転倒ですし、部下のモチベーションやメンタルヘルスにも影響します。焦らず、もう少し長い目で、部下を指導していくことを考えた方がよいかもしれません。
例えば、「2分で説明して」と時間を決め、その時間を可視化することも有効です。
下の図はPC画面上にタイマーで時間を表示させている例です。タイマーを2つ起動させて、会議全体の残り時間と発言の残り時間の両方を表示させています。このタイマーはフリーソフトで、画面上の表示サイズが大きいものを選んでいます。
このように残り時間を見せながら発言してもらうだけでも、時間に対する意識は変わります。
もちろん最初は決めた時間を過ぎてしまうこともあると思いますが、そこで発言をやめさせず最後まで話させてください。これを何度かやっているうちに、短時間で伝えるのが上手くなっていくはずです。
最後に会議に時間を取られて困っている人への処方箋を出して今回の診察は終了です。
水口 和彦(みずぐち・かずひこ)
大阪大学大学院修士課程修了。住友電気工業株式会社でエンジニアとして勤務するなかで時間管理を研究し、残業を大幅に削減。その経験を活かし2006 年に独立。数少ない「時間管理(タイムマネジメント)専門講師」として、数多くの企業や自治体、教育機関などで研修や指導を行い、早稲田大学エクステンションセンターの講師も務める。『部下を持つ人の時間術』(実務教育出版)など時間管理に関する著書多数。「まぐまぐ」よりメールマガジンを毎週配信中。
所属:有限会社ビズアーク/時間管理術研究所
この記事は株式会社パシフィックネットが運営していたWebメディア「ジョーシス」に 掲載されていた記事を転載したものです。
2017年3月28日掲載