情シスリーダーのための時間管理術10
仕事に時間をかけすぎない!
タイパを意識しよう


「タイパ」を高めるためには

「タイパ」という言葉は耳慣れないと思いますが、「タイムパフォーマンス」の略です。


「コストパフォーマンス(費用対効果)」を「コスパ」に略すのと同様に「時間対効果」を省略したものです。ふつう「コスパが高い」というと値段の割に内容がいいことを指しますが、「タイパが高い」というのは、かけた時間の割に仕事の成果が大きいことを意味します。


もちろん、仕事のタイパは高いに越したことはありませんし、タイパが低い仕事はできればやりたくないものです。例えば、時間ばかりかかって、話が前に進まず、何も決まらない会議……。こうしたものはタイパが低い仕事の典型ですね。こんなところには時間を使いたくないものです。


基本的に、自分の仕事のタイパを高めるためには2つの方策が考えられます。


1つは、タイパが高い仕事を行い、タイパが低い仕事はやらないことです。仕事を選ぶわけです。もちろん、現実にはそうそう仕事を選べるわけではありませんが、極端にタイパが低い仕事は断ることも必要です。


もう1つの方策は、ひとつひとつの仕事のタイパを高めていくことです。


もし、仕事のやり方を効率化できて、同じ成果をより短時間で出せるようになれば、タイパは高まります。逆に、成果にあまり関係しないところでがんばりすぎるとタイパを低くしてしまいます。「その仕事にどれだけの時間をかけるべきか?」を考えて行動していくことが必要です。

時間をかけすぎるとタイパは低くなる

ある1つの仕事を行うときのタイパは一定ではない、ということはふだんの仕事のなかで感じている方が多いと思います。


時間をかけて、ていねいにやった仕事がそれに比例した成果を生むとは限りませんし、忙しくて時間をかけられなかった「やっつけ仕事」でも問題がない場合もあります。


もちろん、時間をかけた方がクオリティは上がりますが、時間に比例するわけではありません。これを少し整理しておきましょう。


まず、デスクワークの多くは、ある程度時間をかけないと成果は得られません。


例えば、報告書やプレゼン資料を作って何かを説明する場合を考えてみましょう。下のグラフはタイパ(時間対効果)を表したものです。横軸が時間、縦軸が効果(仕事の成果)になります。


初めに下調べをしたり、内容について考えたりする準備段階があります。この時点では仕事の成果は特にありません。まだ人に見せて説明できる形になっていないからです。これがグラフの左側の領域です。


そこから作業してある程度できあがると、人に見せて説明できる状態になります。グラフで成果が急に立ち上がっているのが「一応できた」という状態、そこからチェックしたり修正したりして整えていくと、仕事のクオリティは上がりますし、成果もさらに高まることが期待できます。


そして、さらに時間をかけて修正したり、内容を追加したり、見映えを整えたりして仕上げていくと、資料としてのクオリティは上がってきます。


しかし、何度もチェックして細かいところを直すという作業は、時間がかかる割には全体のなかでの変化は少ないです。時間に比例して成果が上がるわけではなく、成果の伸びは少なくなっていきます。これがグラフの右側の領域です。


タイパは時間と成果の比ですから、グラフでいうと原点とグラフ上の点を結んだ線の傾きがそれにあたります。このグラフでは、中央付近がタイパが高く、そこから右にいくと、タイパは徐々に低くなっていくことになります。


実際の仕事も同じで、時間をかければかけるほどタイパは低くなってきます。「資料を多く作りすぎ」「細かいところにこだわりすぎ」という状況がそうで、「心配性」や悪い意味での「完璧主義」といえます。


完璧を期するのは悪いことではありませんが、それは時間が余っていればの話です。ふだんから時間が不足しているのなら、時間をかけすぎずに終わらせて次の仕事に取りかかるべきです。


もちろん、あまりにも分かりにくかったり、大きなミスがあったりしないように最低限のチェックは必要ですが、それをクリアしたらさっさとリリースしてしまう方がタイパは高くなるのです。


また、身近なところではメールでも似たような状況はあります。「メールの文面でいろいろ悩んでいたら思いのほか時間がかかってしまった……」という経験のある人は多いと思います。あまりにも雑なメールや感情的なメールはよくないので、送信前に一度読み直すくらいはした方がいいと思いますが、時間をかけすぎないようにしたいものです。


このような「時間のかけすぎ」に気づくためには、どの仕事にどれだけ時間を使ったかを記録して、後でふり返って確認することが有効です。さらに簡単な方法としては、タイマーやストップウォッチで経過時間を計ってみるだけでも気づくことがいろいろあります。


例えば、メールの文面で悩み始めたりすると、20分、30分と時間を費やしてしまうこともあります。冷静に考えるともったいないですよね。このように単純に時間を計ってみるだけでも、よりタイパを自覚できるようになってきます。

さらにタイパが低いのは……

ここまではグラフの右側の「時間のかけすぎ」の話をしてきましたが、最もタイパが低いのはグラフの左側の領域、準備段階で成果が何も得られてない状況です。もちろん、ここからさらに進めていけばいいだけの話ですが、もしそうできていないのなら問題です。


例えば、「あれもこれも」といろいろな仕事に手をつけるけど、どれも中途半端なところで止まっている。ある程度時間を使って考えたり、作業を進めたりはしているけど、形になるところまで進んでいない。その仕事がいつまでも自分の手元にあって、リリースできていない。これらの状況は、時間は使っているのに成果が出ていないので、タイパとしては最悪です。


こうした状況は、マストな仕事(必ずやらなければいけない仕事)ではあまり起こらず、「(やらなくても困りはしないけど)できればやっておきたい」という仕事でよく起こります。私は後者を「ウィッシュな仕事」と読んでいます。ショッピングカートの「ウィッシュリスト」のイメージです。


普段から忙しい人は、そもそもウィッシュの仕事に使える時間は多くありません。それなのに、あれこれ並行してやろうとしても、結局どれも終わらず、何も生まれないことになってしまいます。


タイパが低くならないようにするためには、あれこれ同時に手をつけるよりも絞り込むこと。まず、どれを終わらせるかを決め、それが形になるところまで進めていくことが必要です。


そのためには、逆に「今はやらない(保留しておく)」ものをはっきり決めておくのが一番です。「あれもこれも」になってしまっている人は、ちょっと整理してみてはいかがでしょうか。



さて、これまで10回にわたってお送りしてきた「情シスリーダーのための時間管理術」は今回で終了になります。これまでお読みいただき、ありがとうございました。次回からは装いも新たにビジネスパーソンが感じている仕事での時間管理の悩みを解決する処方箋を具体例を挙げながら紹介していきますので、お楽しみに。


水口 和彦(みずぐち・かずひこ)

大阪大学大学院修士課程修了。住友電気工業株式会社でエンジニアとして勤務するなかで時間管理を研究し、残業を大幅に削減。その経験を活かし2006 年に独立。数少ない「時間管理(タイムマネジメント)専門講師」として、数多くの企業や自治体、教育機関などで研修や指導を行い、早稲田大学エクステンションセンターの講師も務める。『部下を持つ人の時間術』(実務教育出版)など時間管理に関する著書多数。「まぐまぐ」よりメールマガジンを毎週配信中。


所属:有限会社ビズアーク/時間管理術研究所

この記事は株式会社パシフィックネットが運営していたWebメディア「ジョーシス」に 掲載されていた記事を転載したものです。
2017年7月10日掲載