情シスリーダーのための時間管理術6
なぜデスクを片づけられない? タスク管理との意外な関係


デスクの上に積み上がった書類、デスクトップ画面に置いてある大量のファイルやメモ、整理したほうがよいとは思うけど整理できない……。それは「整理が下手だから」とは限りません。実は、タスク管理の本質と深い関係があるのです。



なぜデスクを片づけられないのか?

連載の第2回でも紹介しましたが、私は以前、タスクをふせんに書いて管理していたことがあります。


現在はPCのディスプレイにふせんを貼る人は少ないですが、画面の中(デスクトップ画面)にファイルをたくさん置いていたり、ふせんアプリでたくさんのメモを貼り付けていたりする人はよく見かけます。「ちょっと整理したら?」と言いたくなるくらいゴチャゴチャになっている人もいますよね。実は、これがタスク管理と関係あるのです。


私の場合、ふせん以外にもデスクをゴチャゴチャにしていたものがありました。書類です。


以前はデスクの上に書類をうずたかく積み上げて仕事をしていたのです。時々、それらの書類を片づけようとはするのですが、片づけるのは本当に苦痛でした。「片づけよう」とは思うものの、「片づけたくない」という気持ちもあるからです。片づけると、なぜか不安になってしまうのです。


デスクの上の書類、デスクトップ画面に置いてあるファイルやふせん、これらを片づけてしまうと落ち着かない。不安になる。その理由は、それらのものを無意識に「タスクリスト」として使っていたからでした。

「片づけられない」のではなく「片づけたくない」

私がデスクに書類を積み上げていたのは、「片づけるのが面倒だから」ではなく、その仕事のことをうっかり忘れてしまわないかと不安だったからでした。当時はタスク管理がうまくできていなかったので、書類を目につくところに置いておき、その仕事を忘れてしまわないための保険をかけていたのです。


実際に、書類を目にして、その仕事を思い出すこともよくありました。例えば、毎朝仕事を始める時には、メールのチェックと併行して、デスクの上の書類もチェックして、「そろそろこれをやろう」「今日はこれを終わらせてしまおう」などと考えていました。やるべきタスクを確認していたわけです。


また、ある案件の書類を手に取ったときに、ほかの案件の書類を目にして思い出すこともよくありました。「危なかった、忘れるところだった」と助けられたことも何度もありました。


こういう経験をくり返していると「デスクに書類を置いておく方が安心」という思いが強くなります。無意識のうちにデスクに書類を置くように自分を習慣づけているわけです。


これではデスクを整理すると落ち着かない気分になるのも当然です。「片づけられない」というよりも、「片づけたくない」という感じです。ちなみに私の場合、ときどき一念発起してデスクの上を整理することがありましたが、数日でまた元通りになってしまいました。

思い出すタイミングをコントロールすることが必要

デスクの上やデスクトップ画面の中に書類やファイルを置いておくことは、一種のタスクリストとして機能します。それらを見ればやるべきタスクを思い出せるので、リマインダーとして働くわけです。いちいちタスクを書きとめたりせず、現物を置いておくだけでよいので効率的な面もあります。


しかし、このやり方を「タスクを管理するシステム」として見た場合、脆弱きわまりないものなのです。書類の積み方、ファイルの置き方次第で、うっかり忘れたまま気づかなかったり、ギリギリのタイミングで思い出して慌てたりしがちです。


そして、もう1つ問題があります。このやり方だとタスクを不用意に思い出してしまうことが多くなるのです。


連載の第3回でも述べましたが、「未整理のタスク」は、私たちの気をそらし、集中力を奪います。例えば、ある案件の作業をしようと書類を手に取ったときに他の案件の書類が目に入り、「この案件の納期はいつだっけ?」「そろそろやったほうがよいかな?」と考えたり迷ったりしてしまいます。ひとつひとつのタスクに集中できず、仕事の効率は上がりません。


当時の私は「忙しいのだから集中できなくても仕方ない」と思っていましたが、実際は違います。タスク管理をうまくやれるようになってくると、ひとつひとつのタスクに集中できますし、デスクの上を片づけてしまっても何の不安もないのです。


ここに、タスク管理の方法を考える上で重要なポイントがあります。


タスク管理の重要な要件の1つは「タスクを確実に思い出せる」ことですが、もう1つの重要な要件に「必要ない時には忘れていられる」ということ、つまり「思い出すタイミングをコントロールできる」ということがあります。1つのタスクに集中したい時には、ほかのタスクのことを安心して忘れていられる、そういう状態を作れると、集中力が高まり、仕事の効率は確実に上がります。


第3回で述べた「タスクを1か所にまとめる」ことと「実行日に書く」こと、これらはタスクを確実に思い出すだけでなく、思い出すタイミングをコントロールするためにも有効です。


特に「実行日に書く」ことは、意外に大きな影響があります。


普通にタスクを並べたタスクリストでは、今日はやらない(まだやらなくていい)案件も目に入りますが、実行日ごとに分けて並べたタスクリストは、今日やるべきタスクだけを見たり、少し先のタスクを見たりと、思い出す対象を自分の意思でコントロールできます。また、実行する当日にそのタスクが確実に目に入るという安心感がありますから、必要ない時には安心して忘れていられます。


デスクの上やデスクトップ画面の中がゴチャゴチャになっている人は、自分を「整理が下手」だと決めつけないで、まずはタスク管理のやり方から見直してみてください。片づけても不安にならない状態さえ作れれば、いつの間にか「整理上手」といわれるようになっているかもしれませんよ。


水口 和彦(みずぐち・かずひこ)

大阪大学大学院修士課程修了。住友電気工業株式会社でエンジニアとして勤務するなかで時間管理を研究し、残業を大幅に削減。その経験を活かし2006 年に独立。数少ない「時間管理(タイムマネジメント)専門講師」として、数多くの企業や自治体、教育機関などで研修や指導を行い、早稲田大学エクステンションセンターの講師も務める。『部下を持つ人の時間術』(実務教育出版)など時間管理に関する著書多数。「まぐまぐ」よりメールマガジンを毎週配信中。


所属:有限会社ビズアーク/時間管理術研究所

この記事は株式会社パシフィックネットが運営していたWebメディア「ジョーシス」に 掲載されていた記事を転載したものです。
2016年5月11日掲載