情シスリーダーのための時間管理術
なぜ時間が足りなくなる?
リーダーが抱えがちな時間に関する誤解

時間管理のイメージ画像


はじめまして。今回から時間管理について紹介させて頂く、水口と申します。


私は約10年前まで、あるメーカーでエンジニアをしていました。もともと時間管理に興味があったわけではないのですが、残業が多すぎる毎日に嫌気がさして時間管理に取り組むようになりました。


やってみると案外うまくいかず、かなり試行錯誤したのですが、その結果、残業が劇的に減るとともに仕事のストレスも減るなど、時間管理の劇的な効果を実感しました。現在は時間管理を専門に、さまざまな企業・団体に出向いて研修をしたり、本やこのような記事を書いたりしています。




「時間が足りない」というリーダーは多いですが、それは「仕事が忙しいせい」だけとは限りません。実は、多くのリーダーが抱いている根本的な誤解があるのです。今回はその誤解について紹介していきましょう。

「時間が足りない」のは誰のせい?

研修をしているとよく感じますが、どの企業に行っても、多かれ少なかれ「時間」についての問題を抱えている人がいます。おそらく、この記事をお読みのあなた自身も「時間が足りない」と感じることが多いのではないでしょうか。


この連載ではそんな状況を改善する方法も紹介していきたいと思いますが、まずは足元から、現状の問題点について考えてみましょう。


「時間が足りない」という状況を生む要因はいろいろあります。もちろん「仕事が忙しい」というのもひとつの要因ですが、それだけではありません。「リーダー」の立場にいる人にありがちな、根本的な誤解があるのです。


ほとんどのリーダーは「自分がどれだけ時間を持っていないか」、つまり、「自由になる時間がどれだけ少ないか」をちゃんと自覚していないのです。これでは「時間が足りない」とか「思ったように仕事が進まない」と感じるのは当り前です。

時間の使い方を知る:3タイプの仕事

そこで、普段の時間の使い方について、ちょっと振り返ってみましょう。


「時間」という観点では、私たちの仕事は3タイプに分けることができます。私たちは誰でもその3つの仕事をしています。


1つめは時刻が決まっている仕事で、いわゆる「アポイントメント」です。決まった時刻に、決まった場所で行う仕事で、会議や面談、出張などが該当します。


2つめは時刻が決まっていない仕事の「タスク」です。デスクワークの多くはこの「タスク」です。期限はあっても実行する時刻は自由。自由さがある反面、計画的に進めるのが難しい仕事です。「自分の仕事が進まない」と愚痴をこぼしたくなるときの「自分の仕事」は、たいていこのタスクです。


3つめは「予定外の仕事」です。アポイントメントやタスクとは違い、事前に予定しておくことができない仕事です。問い合わせなどに対応したり、部下からの相談を受けたり、急なトラブルに対応したりするなど、その場で対処していくことになります。

「タスクをやれる時間」はどれだけある?

「時間が足りない」とか「思うように仕事が進まない」と感じる状況は「タスクをやれる時間」が足りていないことを表しています。「タスクをやれる時間」が足りないときには「このアポイントメントがなければよかったのに」「このトラブルがなければよかったのに」とうらめしく思うこともありますが、そんな個々の状況よりも、全体としてどうなっているかが重要です。


あなたは、自分にどれだけの「タスクをやれる時間」があるかを知っているでしょうか? 実は、自分にどれだけの「タスクをやれる時間」があるかを正しく自覚している人はほとんどいないのです。


例えば、同じ職場、同じ職種でも、経験や立場によって時間の配分は違ってきます。下の帯グラフはある職場に属する人が時間をどう配分していたかを示しています。

時間管理術の説明図

経験が浅い新任者は、会議や打ち合わせなどのアポイントメントに呼ばれることは少なく、問い合わせや相談、トラブル対応などの「予定外の仕事」も少ないです。当然、「タスクをやれる時間」は多いです。


同じ職場でも、経験を積んで中堅になってくると時間の配分は変わります。アポイントメントは増えてきますし、問い合わせやトラブル対応などの「予定外の仕事」も増えます。その結果、「タスクをやれる時間」は削られます。


チームやプロジェクトを率いるリーダーになると、時間の配分はさらに変わります。会議や打ち合わせはさらに増えますし、問い合わせや相談を受けることも増えてきます。そのしわ寄せで「タスクをやれる時間」はさらに削られます。管理職になると、さらにこの変化が進む場合もあります。


リーダーの立場にある人の「タスクをやれる時間」はせいぜい全体の3~4割程度。2割に満たない人も少なくありません。一方、ほとんどのリーダーはこの変化を充分に自覚していません。実際に時間配分を集計してもらうと、「タスクの時間がこんなに少ないとは思わなかった」と言う人がほとんどなのです。


「タスクをやれる時間」が少ないことに気づかない。だから、リーダーになる前と同じ調子でタスクを引き受けてしまう。その結果、タスクを抱え込みすぎて仕事が回らない。タスクが終わるのはいつもギリギリ。残業しないと間に合わない……。そんな状況に陥っているリーダーが多いのです。

まず自覚しておきたいこと

上のグラフを見て「予定外の仕事」が多いと思った人もいると思います。しかし、実際に集計してみると「予定外の仕事」は本人がイメージしているよりも多いのが普通です。


この時間配分を正確につかむには、「自分が時間をどう使ったか」という実績を記録することが必要です。ただ、実績を記録するのはかなり手間がかかりますし、その割に即効性の効果は少ないです。時間管理に取り組むなら、その前にやれることがたくさんありますので、順次紹介していきたいと思います。


それよりもまずおすすめしたいのは「タスクをやれる時間」が少ないことを自覚して行動することです。リーダーの場合、目安として3割と考えておくと、大きく外れてはいないはずです。仕事の時間の中の3割というと、残業が少ない人で2時間から2時間半程度。残業が比較的多い人でも3時間くらいです。リーダーがタスクをやれる時間はそれくらいしかないのです。


「1日に2時間半しかない」という前提で考えるだけでも、判断は少し変わってきます。「こんなタスク引き受けてる場合じゃない」「自分で抱え込んでる場合じゃない」「こんな出張してる場合じゃない」と感じたら、思い切って決断してみてください。それだけでも状況は少し改善されていきます。


ここで「タスクの優先順位を考えて行動しよう」と思った方は要注意です。時間管理というと「優先順位を考えて行動すべし」とよく言われますが、単なる順位づけは仕事の抱え込みや先送りを招きがちです。順位をつけるのではなく、「これはやらない」「これは部下に任せる」とはっきりと決めることが必要。「優先順位」よりも「取捨選択」が重要なのです。



水口 和彦(みずぐち・かずひこ)

大阪大学大学院修士課程修了。住友電気工業株式会社でエンジニアとして勤務するなかで時間管理を研究し、残業を大幅に削減。その経験を活かし2006 年に独立。数少ない「時間管理(タイムマネジメント)専門講師」として、数多くの企業や自治体、教育機関などで研修や指導を行い、早稲田大学エクステンションセンターの講師も務める。『部下を持つ人の時間術』(実務教育出版)など時間管理に関する著書多数。「まぐまぐ」よりメールマガジンを毎週配信中。


所属:有限会社ビズアーク/時間管理術研究所

この記事は株式会社パシフィックネットが運営していたWebメディア「ジョーシス」に 掲載されていた記事を転載したものです。
2017年7月10日掲載