リーダーのための「時間管理」解決クリニック8
「忙しいと、イライラしてしまうんです…」

ここは時間に追われ、忙しいリーダーのために開設されたクリニック。

このクリニックには時間管理にお悩みのリーダーが処方箋を求めて来院します。

おやおや、今日もお悩み抱えたリーダーがやってきたようですよ……。

【今回のお悩み】

田村さん(課長職)42歳

最近仕事が忙しいせいか、イライラしてしまうことが多いんです。


よくないとは分かっているのですが、仕事中に話しかけられると不機嫌に返事をしてしまうことがあります。そういえば、先日、部下から「相談したい案件があったが、話しかけにくかった」と言われてしまい…。申し訳ない気持ちになりました。


どんな時に特にイライラするかですか? 自分のデスクでPCに向かっている時ですかね。メールをたくさん受信して、返信に追われている時などは、特にイラついているような気がします。「イライラしないように」と意識しようとしてもダメなんです…。


自分としては優先順位を考えて行動しているつもりですが、時間管理が上手くできてないせいかもしれません。時間管理が上手くなれば、イライラしなくて済むでしょうか? とにかく、もう少し落ち着いて部下に接することができるようになりたいです。


※このお悩みは実際のご相談の内容を元にしたフィクションです。


田村さん、忙しくて大変そうですね。「忙しいと、ついイライラしてしまう」という気持ちはわかります。


ただ、部下が「話しかけにくい」と感じている状況は、あまりよくないですね。それが原因で部下の仕事が遅れてしまうことも起こり得ます。また、田村さん自身もストレスを感じているのも、ちょっと心配です。でも、これは改善できると思います。


田村さんから質問がありましたが、時間管理が上手くなると、このようなイライラを減らすことができます。


それは、単純に「仕事の効率が上がるから余裕ができる」だけではありません。自分の「やらなければいけないこと」が整理できるので落ち着いて行動できるという効果もあります。


むしろ、こちらの方が重要と思います。また、田村さんはメールの処理に追われている時にイライラしがちなようですから、メールの処理方法は少し考えた方がよいかもしれません。

「イライラ」は「仕事の忙しさ」と比例しているとは限りません。大丈夫です。もう少し落ち着いて仕事に向かえるようになるはずです。


では、対策を解説していきましょう。

【忙しいと、イライラしてしまう人の対策】

なぜイライラしてしまうのか?

「忙しくてイライラしてしまう」という状況にも、いろいろあります。


例えば、期限が迫っている仕事を何とか間に合わせようとしている時に気持ちが焦るのは当然ですよね。でも、この場合は1つのことに集中しているので、焦ってはいたとしても「イライラする」という感じとはちょっと違うと思いませんか?


一方、田村さんのように「たくさんのメールに返信しなければいけない」という状況になったり、そこで、さらに誰かに話しかけられたりすると、ちょっとイライラしてしまうという人が多いです。つまり、同時に複数の課題に追われているときの方が、人はイライラしやすいのです。


これには、2つの原因があります。


まず、複数の課題に追われていると、全体が見えづらくなってくる問題があります。「時間が足りるのか」あるいは「期限に間に合うのか」ということが判断しづらく、自信が持てず、焦ったり、イライラしたりしやすくなります。この問題は時間管理、特に、その中のタスク管理を行うことで、かなり解消できます。


もう1つは、それらの課題を覚えておくこと自体が負担になってしまうという問題です。メールなどはその典型です。「このメールに返信しなければいけない」という課題が複数あり、それを忘れないようにしながら、別のメールに目を通したり、メールに返信したりする。これは意外に負担が大きい作業です。


タスク管理の方法を例に説明しましょう。前シリーズの第2回でも紹介したように、自分の「やらなければいけないこと(タスク)」を管理する方法はいろいろあります。例えば、ふせんに書いて貼っておくのも1つの方法です。タスク管理としてあまりよい方法とはいえませんが、例としては分かりやすいと思います。


「このメールに返信しなければいけない」ということを忘れないように意識している状況は、このようなふせんを頭の中に貼っているようなものです。しかし、頭の中のふせんは頼りないものです。


例えば、何かを取りに行ったはずなのに「あれ、何を取りに来たんだっけ?」と忘れてしまうことは、たまにありますよね。途中で何か別の考え事をしたとか、誰かに話しかけられたとか、その程度のことで、頭の中のふせんは落ちてしまうことがあるのです。


このように、たった1枚のふせんでも、保持しておくのはそれなりに難しいため、複数のふせんを保持しておくとなると、かなりの集中を必要とします。そんな時、誰かに話しかけられると、集中を乱されてしまうので、イラッとしてしまうのも当然です。


集中している時に誰かに話しかけられたりすると、イラッとするだけでなく、仕事の効率も落ちます。ですから、特に難しい仕事に取り組む時には、一人になれるよう場所を変えることも有効です。しかし、メール程度のことでそれをやっていてはキリがありません。逆に、それほどの集中が必要ないように、メールの扱い方を変えるのがおすすめです。

ふせんを頭の外に出す

複数のメールを受信したことに気づいた時、あなたはどう処理していますか? 


複数のメールのタイトルあるいは本文に軽く目を通してから、どのメールから返信していくか考えるという人が多いと思います。メールの優先順位を考えて行動しているわけです。


しかし、このように優先順位をつけて処理していくためには、頭の中にたくさんのふせんを貼らなければいけません。そのふせんを保持しておくだけでも大変ですから、余裕がなくなりますし、イライラの原因にもなります。


このふせんを頭の外に出すだけで、作業はかなり楽になります。


例えば、メールを読みながら、返信しなければいけないものはメモ用紙などに書き出しておいて、返信したものにはチェックを入れて完了したと分かるようにする。ちょっと手間はかかりますが、こうすると落ち着いて、イライラせずに処理することができます。


あるいは、そのメールに返信が必要だと判断したら、すぐに返信用の新しいウィンドウを開いておく(返信が終わるまで閉じない)という方法もあります。


こうすると未返信のメールが残っていることが一目で分かりますから、頭の中にふせんを貼らなくてもすみます。ただ、未返信のウィンドウが多くなりすぎると、画面がゴチャゴチャしてきますし、焦ったり、少しイラッとしたりしてしまうかもしれません。


ほかには、返信が必要なメールには「フラグ」を立てておくという方法もあります。手軽にできますが、フラグの数が多くなりすぎると、見落としが出たり、やはり焦ってしまったりすることがあるかもしれません。

ふせんが必要ないように行動する

一方、考え方を変えて、このふせんが必要ないように行動する方法もあります。私としてはこれが一番おすすめの方法です。


ちょっと考えてみてください。そもそも、私たちはなぜ「このメールに返信しなければいけない」ということを覚えておこうとするのでしょうか? 返信を後回しにしているからですよね。


逆にいえば、返信を後回しにしなければ、頭の中にふせんを貼る必要はありません。「1つのメールを読んだら、すぐに返信する」という作業をくり返すだけです。


この方法なら集中しなくてもできますし、話しかけられてもあまりイライラしません。


複数のメールを受信していることに気づくと、誰でもその内容が気になりますし、先に全部の内容を確認したくなります。そこをちょっとこらえるのが、このやり方のポイントです。1つのメールをしっかり読んで、必要ならすぐに返信してしまう。返信まで終わってから、次のメールに目を通す。このくり返しで処理していきます。


この方が、ひとつひとつのメールに集中できますし、同じメールを何度も読み直すこともありません。結果として、より短時間で処理できるのです。ちなみに、後日あらためて返信するものに関しては、タスクとして書き留めておきます。


この方法では、メールの内容に関わらず返信していくわけですから、返信の順序は最適ではないかもしれません。しかし、メールの返信が遅れるといっても、数分から数十分のことです。特に気にしなくてもよいのではないでしょうか? この部分に関しては、自分の仕事の効率を優先させてもらいましょう。


先ほど、田村さんは「優先順位を考えて行動しているつもり」とおっしゃっていましたが、おそらくメールに関してもそうだと思います。この優先順位が意外とくせ者なんです。


「緊急性や重要性が高いものから処理していこう」と考えると、「全部のメールに目を通してから、返信の順番を考える」のが当然だと思えます。


しかし、このやり方は頭の中に多くのふせんを貼ることになり、それだけ余裕がなくなってしまいます。あえて「優先順位を考えない」という方が効率の上がる仕事もあるというのは時間管理のポイントの1つです。メール以外の仕事でも適用できるものがありますから、試してみてはいかがでしょうか?


最後に、メールに向かうとイライラしてしまって困っている人への処方箋を出して今回の診察は終了です。

【忙しいと、イライラしてしまう人への処方箋】

■イライラするのは、忙しさだけでなく、仕事のやり方にも原因があると心得よう
■「○○しなければいけない」というふせん(情報)は、頭の外から出してしまおう
■「1つのメールを読んだら、すぐに返信する」このくり返しで処理してみよう
■優先順位を考えない方が効率の上がる仕事もあると心得よう


水口 和彦(みずぐち・かずひこ)

大阪大学大学院修士課程修了。住友電気工業株式会社でエンジニアとして勤務するなかで時間管理を研究し、残業を大幅に削減。その経験を活かし2006 年に独立。数少ない「時間管理(タイムマネジメント)専門講師」として、数多くの企業や自治体、教育機関などで研修や指導を行い、早稲田大学エクステンションセンターの講師も務める。『部下を持つ人の時間術』(実務教育出版)など時間管理に関する著書多数。「まぐまぐ」よりメールマガジンを毎週配信中。


所属:有限会社ビズアーク/時間管理術研究所

この記事は株式会社パシフィックネットが運営していたWebメディア「ジョーシス」に 掲載されていた記事を転載したものです。
2017年6月23日掲載